針ノ木岳・蓮華岳

日時   2014.8.22(金)〜23(土)

場所   針ノ木岳(2820.6m)・蓮華岳(2798.6m)


針ノ木雪渓は剣沢、白馬と並んで北アルプス3大雪渓といわれている。この中にあっては、大きさやバックグラウンドとなる背景の雄大さでは剣沢・白馬に譲らねばならないが、歴史上での知名度では針ノ木峠のほうが名を馳せているといっていい。
戦国時代末期の天正12(1584)年12月、富山城主の佐々成政は火急の要件を携えて浜松の徳川家康に会いに行く。そのとき通ったのがこの針ノ木峠であった。
なお針ノ木岳は久しくヤマクボの頭とよばれいたらしく、針ノ木岳命名されたのは大正時代のことだという。





8月22日(金) 快晴
本庄(3:40)〜麻績IC〜55号線が通行止め〜麻績IC〜安曇野IC〜大町(すき家)[朝食]〜(7:20)扇沢〈無料駐車場〉(7:30)・・・(7:35)扇沢駅(7:45)・・・登山口〈空き地P〉(8:10)・・・(8:45)湧き水(8:55)・・・(9:10)大沢小屋(9:20)・・・(9:55)雪渓末端〈橋〉(10:20)・・・上部雪渓出合(11:20)・・・(12:20)針ノ木岳峠-針ノ木小屋[2536m]〈宿泊手続・昼食〉(13:10)・・・(14:10)針ノ木岳(15:35)・・・針ノ木峠-針ノ木小屋(16:05)[泊]

扇沢針ノ木峠    3時間40分
針ノ木峠針ノ木岳  1時間10分
針ノ木岳針ノ木峠  30分    計 5時間20分




立山黒部アルペンルートの長野県側の起点、扇沢駅。 7:45



 

一般車の入れない関電トンネルへの車道を4回突っ切ると左に広場が現れ、登山道入口の左正面に早くも針ノ木岳が姿を見せる。 8:20





大町へと流れる篭川越しに浅間山。 8:30





対岸へ渡るための木橋が架けられた針ノ木雪渓末端。この上でアイゼンを付ける。 10:00 





両岸に岩が迫る「ノド」と呼ばれる、針ノ木雪渓でいちばん狭くいちばん傾斜のきつい部分。ここを通過すれば雪渓の終了点は近い。背後の山は岩小屋沢岳(2630.3m)と爺ヶ岳(2669.8m)。 10:50





中央の鞍部が針ノ木峠。峠の直下はガラガラのザレ場で、丸太でガードされたジグザグの急登が続く。 12:10





針ノ木小屋。 12:25





針ノ木雪渓沿いの高山植物

クロクモソウ(黒雲草)−ユキノシタ
湧き水が流れる岩場に咲いていた。



シナノナデシコ信濃撫子)−ナデシコ



タテヤマウツボグサ(立山靭草)−シソ科
靭とは弓矢の矢を入れる籠製の用具だそうだ。



クロトウヒレン(黒唐飛簾)−キク科



タカネニガナ(高嶺苦菜)−キク科
平地にも咲くニガナの高山型。丈が低いぶん花びらの数は多い。



ミヤマキンポウゲ(深山金鳳花)−キンポウゲ科
たびたびの登場だが、雪渓わきでは群落を成すので外すわけにいかない。



ヨツバシオガマ四葉塩釜)−ゴマノハグサ科



エゾノレイジンソウ(蝦夷伶人草)−キンポウゲ科
トリカブト属なので当然、毒(薬)草と思われる。



モミジカラマツ(紅葉唐松)−キンポウゲ科



ミヤマダイモンジソウ(深山大文字草)−ユキノシタ



ウサギギク(兎菊)−キク科
大きいものでは直径5センチにもなる。群落も作るし色も派手な黄なので目立つことこの上ない。誰が名付けたのか兎の雰囲気を持っているから不思議だ。





夕食付き宿泊(8100円)の手続きを済ませ、今日は針ノ木岳へ登ることにした。




針ノ木岳山頂からの展望
雲はあるものの太陽も顔を出しまずまずの展望。風は穏やかで寒くはない。我々の他に登山者はなくひとり占めの眺望を心行くまで楽しんだ。

南東から北西のパノラマ。





北。手前からスバリ岳(2752m)、赤沢岳(2677.8m)、黒部別山(2353m)。





蓮華岳(2798.6m)。





立山(3015m)と剱岳(2998m)と黒部湖。






針ノ木岳高山植物

ゴゼンタチバナ(御前橘)−ミズキ科
お盆も過ぎたこの時期、もう真っ白な苞(4枚の花びら状)を望むことはできない。やがて苞は枯れ落ち赤い実が付くのだ。



逆光に輝くチングルマ(稚児車)の綿毛。



エゾシオガマ蝦夷塩釜)−ゴマノハグサ科



イワツメクサ(岩爪草)−ナデシコ



タカネシオガマ(高嶺塩釜)−ゴマノハグサ科



トウヤクリンドウ(当薬竜胆)−リンドウ科
当薬というくらいで昔は胃薬の原料となり乱獲されたそうだ。



イブキジャコウソウ(息吹麝香草)−シソ科
麝香の匂いを筆者は知らないが、この植物には確かに芳香がある。ハーブで有名なタイムとは近種だそうである。



イワギキョウ(岩桔梗)−キキョウ科
花は横向きか上向きで花冠に毛がない。



ミヤマリンドウ(深山竜胆)−リンドウ科



タカネヤハズハハコ(高嶺矢筈母子)−キク科
花はカサついた感じでドライフラワーの雰囲気をもっている。







針ノ木峠から雪渓側の展望。手前の尾根は針ノ木岳から爺ヶ岳への縦走路で、右端の岩小屋沢岳の左奥が白馬岳、右奥が鹿島槍ヶ岳である。






8月23(土) 晴れ(朝は霧)
針ノ木峠-針ノ木小屋(5:30)・・・(6:40)蓮華岳(7:20)・・・(8:20)針ノ木峠-針ノ木小屋(8:50)・・・(9:20)上部雪渓出合(9:30)・・・(10:05)雪渓末端〈橋〉(10:25)・・・(10:50)大沢小屋(11:05)・・・湧き水(11:20)・・・登山口〈空き地P〉(11:50)・・・(12:20)扇沢〜上原(わっぱら)の湯〜カイザー(鹿肉ステーキ)[大町]〜川中島(桃)〜長野IC〜上田IC〜上田〜上田IC〜本庄


針ノ木峠蓮華岳  1時間10分
蓮華岳針ノ木峠  1時間
針ノ木峠扇沢   2時間45分  計 4時間50分




昨夜は雨が降り雷も鳴っていたが、夜が明けてみるともう雨の心配はなさそうだ。最低限の荷物を持って今日は蓮華岳を往復する。
蓮華岳はコマクサの咲く名山で、その植生範囲の広さでは日本一との声があり、またシロバナコマクサの出現率が高いともいわれている。




コマクサ(駒草)−ケシ科
目を皿にして白花を探したが出会うことはできなかった。3枚目のコマクサも見つけたときは「やった、白花!」と胸を弾ませたが、よく見ると薄く赤みがかかっていて、残念ながらシロバナと呼べるものではないようだ。



蓮華岳の山頂まではいくつかの偽ピークがあり、意外に時間がかかってしまったがおかげで霧が晴れてきた。




蓮華岳の山頂に建つ祠。ここを南に折れれば蓮華の大下り。北葛乗越へ500メートルの下りが待ちかまえている。 6:35 




針ノ木岳立山連峰




槍ヶ岳




ここでも360度の展望を思う存分堪能することができた。やはりひとり占めである。






小屋へ戻りベンチで帰りの支度を整え下山にかかる。小屋で知り合った清水君と一緒である。 8:50




下りはアイゼンなど不要と思っていたが、硬くしまった雪の下りは思いのほか歩きづらい。さらに表面が黒く汚れているので転んだら真っ黒になってしまうだろう。岩に腰掛けアイゼンを付けたが、アルミ製の4本爪では思わせぶり程度の効き目しかなかった。





針ノ木雪渓末端部。昨日はなかった亀裂が生じ、20メートルに渡って崩落していた。 10:00





湧き水の流れる水場。目の前で大量の清水が湧き出している。 11:20






帰りの針ノ木雪渓沿いの高山植物

トリカブト(鳥兜)−キンポウゲ科
トリカブトは種類も変異も多く全く区別がつかない。



ミヤマシシウド(深山猪独活)−セリ科



ゴマナ(胡麻菜)−キク科



エゾアジサイ蝦夷紫陽花)かガクアジサイ(萼紫陽花)−ユキノシタ






2日間の歩行時間  10時間10分
2日間の獲得高度差 1760m






清水君とは付かず離れずだったが最後は扇沢駅で合流。自宅のある上田まで送ることになった。おかげで大町の鹿肉レストラン「カイザー」を案内してもらえ、鹿肉ステーキ定食(1800円)を味わうことができた。またオリンピック道路沿いの道の駅「中条」では波田産のスイカを1000円で買い、近くの金多満屋(かねたまや)ではクルミ入りの「虫倉最中」を知ることができ大満足であった。