谷川連峰 主脈縦走

日時   2013.5.4(土)〜5(日)

場所   谷川連峰主脈(トマの耳[1963.2m]・オジカ沢の頭・万太郎山[1954.1m]・
     仙の倉山[2026.2m]・平標山[1983.7m])

メンバー 設楽 和男 ・ 松崎 則子 ・ 中田 裕之



 谷川岳の縦走は大きく2つに分けられる。
 1つは馬蹄型縦走と呼ばれるもので、土合を起点に白毛門、笠ヶ岳朝日岳、七ッ小屋山、武能岳、茂倉岳、一の倉岳、谷川岳と名のついた山だけみても8つものピークをアップダウンして、再び出発点の土合に戻るというものだ。
 そしてもう一つが主脈縦走で、清水峠から南下してきた上越国境山脈は谷川岳で西へ折れ曲がり、2000メートルをわずかに切るいくつかの山を串刺ししたのち、平標山で再び南進をはじめる。その折れ曲がりの東西を結ぶ10Kmの直線的縦走路と、その前後5Kmを含めた合計15Kmを歩くのが谷川連峰主脈縦走である。


5.4(土) 晴れ

本庄〜水上IC〜谷川岳ベースプラザ〜谷川岳ロープウェー〜天神平(7:30)・・・熊穴沢小屋(8:50)・・・天狗の留まり場(9:40)・・・(10:40)谷川岳[トマの耳・肩の小屋](11:30)・・・中ゴー尾根分岐(11:50)・・・オジカ沢の頭(13:25)・・・(13:30)オジカ避難小屋(13:40)・・・小障子の頭(14:25)・・・大障子避難小屋(15:00)【テント泊】


歩行時間  6時間20分

獲得高度差 820m



過去の谷川エリアの記事はこちら☟ 
谷川連峰 馬蹄縦走 http://d.hatena.ne.jp/wsbkm777/20121019/1350637432
湯檜曽川から旧清水越国道 http://d.hatena.ne.jp/wsbkm777/20120525/1337945709
白毛門 http://d.hatena.ne.jp/wsbkm777/20111002/1317547979




 谷川岳ロープウェイに乗り天神平へ下り立つ。
 空は抜けるように青く空気はよどみない。天気予報はむこう2日間の好天を告げていた。
 靴ひもを締めなおし真っ白な残雪に第一歩を踏み出す。はやる気持ちを抑えゆったりとしたペースで初めの急登を登りつめると、残雪におおわれた谷川岳の双耳峰が目に飛び込んできた。左がとトマの耳(1963.2m)、右がオキの耳(1977m)だ。




 天神尾根と谷川岳。 8:10



 田尻尾根を越え天神尾根へ回り込む。熊穴沢小屋の手前の眺めのいい場所で小休止、これから進む天神尾根と主脈の稜線がまぶしいくらいに輝いて見える。熊穴沢小屋は周りの石垣の上部が見えていて中にも入れそう。でもここが夏は樹林におおわれてしまうなんて今は想像できないくらいに開けている。


小一時間で天狗の留まり場という、大岩が突出した展望台へ出てそこでも小休止。



 天狗の留まり場(稜線上の黒い岩)とザンゲ岩(右上)。 9:20



 ここから上はなだらかながらだだっ広く変化のない斜面を登る。夏ならば笹が密生する大斜面だ。昨夜は風が強かったのだろうか、ダケカンバの枝先には霧氷がへばり付いている。熱け冷ましに口に含むと、美味くはないが冷たくて心地よかった。



 10時40分に肩の広場へ到着する。どっちでもいいのだけれどトマの耳くらいは登っておくかということで、空身で山頂に立ってきた。それにしてもこんなところで小一時間も腰落ち着けちゃってこの先だいじょぶなんだろうか。天気いいからね、ついのんびりしちゃうよ。



 トマの耳からオキの耳。 10:50



 気を引き締め直し、少々重さを感じるようになってきたザックを背負い、折れ曲がりの起点、肩の小屋の玄関前から谷川連峰主脈縦走路へと歩き出したのだ。



 肩の小屋の玄関前から主脈縦走へと歩き出す。11:30




 中ゴー尾根分岐からのオジカ沢の頭。 11:50


 しばし下って中ゴー尾根の分岐を左に見送ると緩やかな登りとなる。振り返り見る谷川岳はもはや双耳峰ではなく、トマとオキとを支点にする吊尾根となっていた。右奥には武尊山尾瀬の山が指呼できる。


オジカ沢の頭への登りから



 谷川岳と来た道を振り返る。



 俎粠(まないたぐら)山稜。 12:40




 ここまで順調にきていたがオジカ沢ノ頭の手前でチョンボしてしまった。
 俎粠(まないたぐら)をオジカ沢の頭と勘違いしていた我々は、オジカ沢の頭を途中の名もない小ピークと思い込んでいた。そこで俎粠に向かう左に巻くトレースに引き込まれてしまい、急な雪面で身動きができなくなるはめに陥ったのだ。ここまで必要がなかったのでアイゼンを付けていなかったのも結果的に災いしたといえる。どうやら先行者が間違えてつくった足あとのようで、設楽氏が地図を確認。いまトラバースしている右のピークがオジカ沢の頭と判明し、何とか踵を返して稜線に戻り尾根上に道を発見したのだ。



 オジカ沢の頭からの展望はもちろん360度さえぎるものはない。だがここだけは風が強く山頂の標識からは20センチを超えるエビの尻尾がぎっしりと延びている。寒いのとザックを降ろして休みたい思いがあったのでここはスルーすることにした。わずかに下った西斜面にはかまぼこ型のオジカ避難小屋が建っていて周りには笹原は広がっている。中に入らずともここはまったく風が当たらず穏やかに休憩することができた。


 オジカ沢の頭を超えると万太郎山のどっしりとした山容を正面に見ながらの快適な下りとなる。やもすれば鈍重でずんぐりに見られがちな万太郎山だが、北に派生するのこぎり状の岩峰群がきりっと引き締めているように私には感じられる。いい姿である。



 小障子の頭から万太郎山。右に派生する岩峰群がずんぐりな山容を引き立てている。14:25



 笹原の道を下っていると2,3百メートル前を一人の登山者が先行しているのが見えた。今日はどこまで行くのだろう。


 ひと登りすれば、お供え餅の形をした小障子の頭。谷をへだてた茂倉岳が大きく立派だし、万太郎谷を見下ろせば土樽や湯沢の飯士山を眺めることができた。大障子の頭との鞍部に避難小屋も見下ろせる。再び下ってわずかに上り返せば、そこは今宵の宿泊を予定している大障子避難小屋だった。



 ザックを降ろし入口のドアを開けてみてビックリ。取手の不具合でドアがきちんと閉まらず、隙間から吹き込んだ雪が山になっている。雪は凍っていてびくともしない。途中ですれ違った登山者が、大障子避難小屋は中に雪がたまっていて使用できないと話していたがこういうことだったのか。小屋内にテントを張る予定でいたがこれでは仕方がない。風は穏やかで雨の心配もなさそうだ。西側の平地に場所を見つけテン張った。14:40






5.5(日) 霧のち晴れ

起床(4:30) 大障子避難小屋(5:40)・・・大障子の頭(6:30)・・・(8:10)万太郎山(8:40)・・・越路避難小屋(9:25)・・・毛渡乗越[越路](10:00)・・・エビス大黒の頭(11:45)・・・エビス避難小屋(12:35)・・・(13:30)仙の倉山(13:50)・・・平標山(14:50)・・・松手山・・・鉄塔(16:25)・・・平標登山口(17:10)・・・元橋BS(17:16)〜路線バス〜越後湯沢駅上越線土合駅・・・谷川岳ベースプラザ〜水上IC〜湯沢IC〜越後湯沢駅〜湯沢IC〜本庄


歩行時間  9時間40分

獲得高度差 1050m







 小屋前からの小障子の頭。 5:40

 朝霧の中、まずは大障子の頭を目指す。霧の隙間に青空が透けて見え、太陽も時おり顔をのぞかせるが、基本的には霧の中なのでどんなルートだったかよく憶えていない。大障子の頭を過ぎると大岩を巻くような場所もあるがそれも一時的で、万太郎山への登りにかかると笹と岩の間をジグザグに歩くようになる。その頃にはだいぶ霧が薄れていき、山頂が近づくにつれ上空は快晴へと変わっていった。



 霧が晴れ、万太郎山が近づく。 7:35



 8時10分、万太郎山に到着。他には誰一人いない山頂で歓喜の雄叫びをあげているあいだにも、ますます空は晴れわたり周りの景色は鮮明になっていく。来し方を振り返ると昨日今日たどった主稜線が一目瞭然だし、これから向かう仙の倉山方面も青空を背景に早く来いと誘なっているようだ。万太郎からの眺望をほしいままに楽しんで大満足の3人だが、行程はまだたっぷり残っている。距離的にはまだ半分も来ていないのだ。

万太郎山から

 谷川岳からの主稜線。 8:20



 これから向かうエビス大黒の頭、仙の倉山、平標山。 8:30



 山頂の霧氷。 8:40






 やせ尾根を行く。 8:55


 万太郎山南面の広い尾根を一気に下る。登りに差し掛かると一転してやせ尾根状になるがそれも束の間で、東俣の頭の右手を巻いて下れば、こちらもかまぼこ型の越路避難小屋の前に出る。エビス大黒の頭と谷川連峰最高峰の仙の倉山がを阻むように立ちはだかっている。


 東俣の頭。 9:00





 小屋を右に見送ってさらに下ること20分。谷川連峰主脈縦走中の最低鞍部、毛渡乗越(越路)1568メートルに下り立った。南面は左右から岸壁が迫りパックリ口を開けているが、すぐに牧歌的な笹原となり多くの支流を従えて赤谷川となる。北面の毛度沢は仙の倉谷と合流し土樽で魚野川と名を変える。ここからエビス大黒の登り下りを含め仙の倉山までは600メートルの高度差が待ち受けている。9:45





 エビス大黒への登りから万太郎山(左上)と東俣の頭(右上)。 10:00





 陽が高くなって気温が上がり雪はグズグズで傾斜もきつく、エビス大黒の頭までの2時間は実に長かった。 11:45





 相変わらず万太郎山と東俣の頭。だが奥には谷川岳が泰然とした姿を現した。
 下方の鞍部が毛渡乗越。 12:00





 エビス避難小屋からの仙の倉山。 12:25





 エビス避難小屋(中央カマボコ型)とエビス大黒の頭。 12:40

 大休止する間もなく一度下ってエビス大黒避難小屋のわきをすり抜ける。そして永遠と思われるような登りはさらに続いた。



 仙の倉山への登りから越し方を振り返る。 12:45




 ここで時間を計算してみる。下山してからは平標登山口で南越後観光の路線バスに乗り、湯沢へ下り上越線で土合へ帰ることになっている。計画でのバス便は14時5分発だが現在13時・・・、とてもとても間に合わないのでひと便遅らせることにした。これで心に余裕をもって歩けるぞ。仙の倉で一息いれよう。




 13時30分、仙の倉山着。全員集合の記念写真を撮り、連峰最高峰でのパノラマを心行くまで堪能した。春霞におおわれてはいるが上越国境の山は全部見えるのだ。 



 仙の倉山から北を望む。 13:30



 ここから西は雰囲気ががらりと変わり草原状の緩やかな道になる。木道や階段も現れやっと急登から解放されるのだ。のんびり行こう。


 ここからは木道も現れやっと緩やかな道になる。
 右から2つ目の円錐峰が平標山。 13:50



 国境縦走路の最後は平標山。大展望はここまでだ。振り返るとたおやかな仙の倉山のすぐ左に万太郎山谷川岳が並び、遥か彼方の八海山までが遠望できた。
 ここで改めてコースタイムを確認すると・・・、なんとまだ2時間もかかるではないか。次のバスは17時15分、のんびりしている場合ではない。

 平標山山頂から仙の倉山を振り返る。3つ並んだ中央が本峰。
14:50





 松手山から平標山(右)を見上げる。 16:00


 
 だからといってそうペースを上げられるわけではない。まだ雪の上を歩けるうちはよかったが、松手山からは残雪が消え乾いた階段状の急降下。これが雪山用の堅いブーツにはかなり堪えて、さらに2日間の筋肉疲労も加わり両脚がもう棒状態である。思いのほか時間を食ってしまい、下り着いたときには17時を回っていた。冷静に考えれば登山口のバス停はすぐ左手にあったはず。だがそれに思い至らず下へ下へと体が動いてしまい、おかしいなとは感じながらも、元橋までさらに400メートルも歩いてしまった。だって数メートル登るのももういやだったのだ。
 
 荷物を降ろす間もなくバスが来る。後続の2人はどうしたのか? この便を逃せばあと2時間待たなければならない。「えい、やー」で単独乗り込んでしまったが、電話がなかなか通じずしかもバッテリー残量もそう多くない。かなりやきもきもしたものだ。そのうちに松崎さんと連絡がつき、バスに間に合わなかった2人は次の便(19時9分発)まで待って湯沢へ下り、私はその間に上越線で土合へ周り、車を回収して再び湯沢駅で合流することにした。

 私はというとは空腹でのどはカラカラ。バス停でも湯沢駅でも乗り継ぎ時間が綱渡り状態で自販機にも立ち寄れない。Suicaが使えず切符を買う時間もないので乗車証明書を出してもらい、危機一髪で乗り込んだ。しかも17時56分発の水上行きはこれが何と最終。もし間に合わなかったらどうしたろう、新幹線か?

 湯沢で合流後は駅近くの和食屋で湯沢名物?「たれカツ丼」を食べ空腹を満たして帰路についた。もう9時を過ぎていたので交通渋滞はなかった。



 
歩行時間  2日間計 16時間

獲得高度差      1870m



 今回、2日目の行動計画を軽くみてしまったようだ。3、4日前に降雪があり歩きにくい雪が残っていたし、2日目は疲れも出る。1日目に頑張って越路避難小屋まで行く計画にするべきだった。初めからそのつもりなら行ける距離と時間だ。
 2日間ですれ違った登山者はたったの5組6人で、そのうちの3人は平標側から仙の倉までの往復である。直近の先行者は1人だ。まこと静かで穏やかな2日間であった。
 長年の念願だった谷川連峰主脈縦走、次回は花か紅葉の時季に逆コースで挑戦したい。